5G

今年から日本でもサービスが開始された5G.自分の頭の中を整理するためにまとめようと思ったがすでにそこかしこに情報はある. 同じような内容を書いてもしょうがないので,概要はそこそこに僕が抱いた疑問について調べたことを中心にまとめた.

アイスブレイク5G

5Gは第5世代移動通信システム(5th Generation)のことである.現在僕達が使用しているLTEや4Gの次の世代のことといえば分かりやすいだろうか.

ちなみに今までの変遷は以下の通り(p.3参照 [1]).

  • 1G … 平野ノラ.ショルダーフォン. ( 各国ごとに別々の方式(アナログ))
  • 2G … メール,インターネット ( 各国ごとに別々の方式(デジタル))
  • 3G … 音楽,ゲーム,映像配信 ( 世界標準方式になった(デジタル))
  • 4G … 動画配信

5Gの特徴は以下の通りである.

  • 超高速大容量 最高伝送速度10Gbps
  • 低遅延 1ミリ秒程度の遅延
  • 多数同時接続 100万台/km2の接続機器数

言葉ではイメージしづらいかもしれない.携帯キャリア4社のCM映像について所感をメモした.

キャリア 5GのCM映像 連想されるもの
NTTドコモ 5G Concept Movie「新しい物語のはじまり」 エンタメ( F1, ライブ), 人命救助 ( 遠隔医療), ドローン配送
au TVCM | au 「au 5Gその手に」篇 エンタメ(スポーツ観戦)
ソフトバンク ソフトバンク CM 5Gってドラえもん?「登場」篇(30秒) ドラえもん的な
楽天モバイル N/A 公式チャンネルを見る限りまだなさそう

ドコモ,au,ソフトバンクの中ではソフトバンクはまだ明確にこれといってイメージできていない感を受ける.まぁ,ブルース・ウィリス氏を起用しているので,例によって地球を救うサムシングエニシングかもしれない. 関係ないがauのCMは再生回数が1,100万回を超えており(ドコモは21万回), 正直盛り込んでいる内容はドコモの方が多いのでこの圧倒的な再生回数に混乱したが コメント欄を読む限りどうやらCMで使用されているSEKAI NO OWARIの曲が最高らしい. 希望に満ちた5Gの動画再生回数がSEKAI NO OWARIの曲で伸びているのは中々示唆的である.

5Gの特徴

それとなくイメージがついたところで特徴についてまとめておく.正直まとめる必要がないほどに情報が溢れているが備忘録として.

超高速大容量

一番分かりやすいのがこれで,単純に今よりも通信速度が速くなる. 求められる伝送速度は下り20Gbps,上り10Gbpsで,これは4Gの10-20倍に相当する. 例えば飛行機での長距離移動の際に映画のダウンロードが一瞬でできる.米国での実験結果によると4Gでは1時間以上かかった映画が34秒でダウンロードできたとのこと. 長距離飛行機移動は日本人の場合だと国際線が多いかと思うが,国際線のチェックインが基本2時間前ってことを考えるとダウンロードに1時間かかっても問題ない気がする. おそらく映画を一本のみならず何本も見たい人たちにとっては夢のような速度ということかもしれない. また4K,8Kのような超高精細映像になればなるほど恩恵に預かれるとも言える.

ちなみに5Gの伝送速度は端末と基地局の間の話なので,たとえ5Gで20Gbpsの伝送速度が出たとしても 基地局間は光ファイバーでつながっているのでせいぜい1Gbpsしか出ないことに注意.まぁ,現状,実測値が平均30Mbpsであることを考えると1Gbpsも出たら死ぬほど快適だが.

低遅延

遅延は1ミリ秒程度の遅延と言われており,これは4Gの約10分の1と言われている. もちろんこれも無線通信の範囲なので光ファイバーの長さによって遅延は加算される.ちなみに一般に光ファイバーを使った有線ネットワークにおける遅延は概ね200kmにつき1ミリ秒.東京駅から梅田駅まで車で500km程度なので,仮に東京駅から5Gを利用して梅田駅付近のサーバーと通信が必要になる場合は遅延は2,3ミリ秒ということになる.

遅延がクリティカルなものとしては各社がCM動画に載せているように真っ先にゲームが挙げられる(快適にプレイするためには数十ミリ秒以内を求められる)がその他にもある. 医療分野では救命医療や遠隔医療において先に挙げた超高速大容量で移動中でも高精細な映像を見ながら低遅延による遠隔手術が可能になり救える命が増える. ちなみに平成29年の救急出動件数は約634万件で,搬送人員数は約573万人で過去最高を更新している[2].少々脱線するが少子高齢社会で救急出動件数が増え続けているということは主に高齢者が搬送されている可能性が考えられる.低遅延は高齢者を救うとイメージしておくと良いかもしれない.もっとも,便利な世の中になって救急出動を依頼するハードルが低くなっている可能性もあるが.

他には,工場の機器の無線化が進むと言われている.ケーブルの取り回しが煩雑のため,機器の移動が非常に面倒だがこれがなくなる.確かに家のパソコン周りのケーブル類も無線化されたらどんなに素敵だろうといつも思う.個人的にはモニターを無線化したい.あと5G関係ないけど常に最適な長さに伸び縮みするケーブルとかほしい.

多数同時接続

1平方キロメートルあたり100万台の接続機器数が可能になり,これは4Gの100-500倍である. 日本の人口密度は1平方キロメートルあたり335人なので[3],全員がスマホを持って同時に5Gを利用しても問題ない計算になるがイメージしづらい.もっと分かりやすい例でいえば満員電車でもみんなスマホをサクサク使えるということだ.他には,いわゆるIoTが進むということ.身の回りの機器がすべてインターネットにつながっている状態になる.

以上,5Gの特徴である超高速大容量,低遅延,多数同時接続についてまとめた. ちなみに,上記に挙げた5Gの数値はいずれも要求仕様であるため実際にはもっと下回ることにも留意する. なんじゃそりゃと思うかもしれないが,通信の世界はいつもベストエフォートだ.だったらもっと大きな数字書いてもバレないんじゃないかって思うが,そのあたりはきっと理論値で担保されていると予想. さて,基本を抑えた上で続いては世界の状況を見てみる.

世界の5G取り組み状況

5Gの覇権を握る国が次の世界を支配すると言われている.なぜか?アメリカがこれまで覇権を握ったのはまぎれもなくインターネットに関わる技術標準の策定に主導的な立場にあったことが大きく寄与しているかららしい.そう本に書いてあった.まぁ,たしかにGAFAといわれるモンスター企業は全部アメリカだ.さて,この5G覇権争い,もうお分かりのことと思うが中国がモーレツに推し進めている.

各国の状況は以下の通り(p.7参照 [1] )

国名 展開時期
米国 2019年4月から本格展開
欧州 2019年4月からスイス,6月からイタリア,スペイン,7月からイギリスで順次展開
韓国 2019年4月から本格展開
中国 2019年中頃から順次展開
日本 2020年本格展開

現在新型コロナウイルスの影響や,陰謀論(後述)により反対運動が行われていたりで各国遅れが生じているが,最近のニュースによると中国の5G契約数は世界の7割を握る見通しとのこと[4].いやはや,モーレツである.

5Gの安全性について

電磁波の人体への影響は不明という話を聞いたことがあると思う. 新型コロナウイルスの原因が5Gの電磁波にあるとして5Gの基地局を壊す運動がイギリスでは起きており(実に80もの基地局が燃やされたらしい[5]),フランスやスペイン,イタリアといったヨーロッパ諸国は5Gの推進に慎重になっている.果たして5Gは安全なのだろうか?ドイツに拠点をおく科学団体ICNIRPの調査によると安全性には問題ないとのこと[6]

Despite the overwhelming evidence that 5G, like earlier mobile standards, is safe for the public, a large community of sceptics fear it will cause – or already is causing – health problems, including, supposedly, coronavirus. There is no evidence to support a link between the two.

不安な気持ちを払拭するためにも専門家と一般人のQ&Aみたいな場があるともっと良いかもしれないと感じた.また,日本では約50年以上にわたる国内外の研究成果に基づいて「電波防護指針」が策定され,その指針に従った規制が導入されており,これは国際ガイドラインと同等であり,世界保健機関(WHO)はこのガイドラインを支持している[7]

電波防護指針では熱作用により人体に有害な影響が及ぶ可能性のある全身における電波の吸収量に、約50倍の安全率を考慮して、この基準値を定めています。

5Gの安全性については問題ないとみて良いだろう.

5Gの経済効果について

移動体の業界団体であるGSMA(GSM Association)によると移動通信関連の経済効果は2024年までに4兆9000億米ドル,5G単体では2034年までに2兆2000億米ドルに上るとのこと[8].これまたモーレツだ.

周波数帯に関して

5Gでは一般に周波数帯別に3タイプ存在する.

タイプ 周波数帯 特徴
ハイバンド 日本では28GHz帯 超高速だが電波の到達距離は短い
ミッドバンド 日本では3.7GHz帯と4.5GHz帯 伝送速度も電波の到達距離も程々に良好
ローバンド 600MHz - 900MHz 4Gの10~20%増し程度で日本では扱いなし

電波は周波数が高いほど直進性が大きくなり,障害物の影に回り込む性質が弱まるため,ハイバンドのような高周波数帯は広いエリアをカバーするのが苦手であることから,ミッドバンドが良い感じだ.

よくSub6とかミリ波とか言われるのはミッドバンドかハイバンドかということを意味している. Sub6は名前の通り6GHz以下という意味で,ミリ波は30Hz以上という意味だが日本では28GHzもミリ波と呼んでいる.5G対応のスマホの購入を検討する際にはこの項目をチェックしておくと安心かもしれない.

周波数の割当

日本のキャリア4社で,実は周波数割当は平等ではない. 以下が割当である(p.30参照 [1] ).

キャリア ミッドバンド ハイバンド
NTTドコモ 2 1
KDDI 2 1
ソフトバンク 1 1
楽天モバイル 1 1

ドコモとKDDIはミッドバンドが2つ割り当てられている.これに関しては審査基準があり,ソフトバンクも申請したものの,結果としてはこの2社が2つ割り当てられる結果となった.

最後に

自分の頭の中を整理するために書いたが全然書き足りない.今後も順次まとめていく予定.

各種資料